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ポルシェ911 964と993のエアコンコントローラの解析修理 その2


スーパーカー、スポーツカー専門ECU修理 HEART Inc.

ざっくり言うと…

  • 964と993のエアコンコントローラ、同じじゃない。
  • 回路構成はほぼ同じだが、993は改善されている
  • 配線が違うので、要注意

ポルシェ911 964と993のエアコンコントローラの解析修理 その1
のつづき。

前回はアナログ回路のK基板、デジタル回路のG基板を分離したら、基板も実装されている部品も違うことが分かりました。
そこで、各基板のコネクタのピンからICまでのプリント基板のパターンを、テスタを当てて導通を確かめながらリバースエンジニアリングしていくと、964用CCUと993用CCUは、明らかにピン配置が違います。

そこで、ワークショップマニュアルの配線図を参照して、その違いを表にしてみました。

964と993のCCUのピン配置の違い

良く調べると、964に993のCCUを取り付けることは、車体側ハーネスのピンに加工を加えることで可能ですが、逆に993に964の中古のCCUを取り付けることは、リスクを伴うことが分かります。
また、964のドアミラー下部に付いている外気温センサーは、エアコンのコントロールには使っていないこともわかります。

さて、割と頻繁に故障していたらしい964のCCUですが、993が発売されCCUも993用に切り替わると、964用のCCUを注文しても、993用が届き、加工をして使え、ってな指示があったようですね。
CCUはポルシェ製ではもちろんなく、ありがちなBOSCH製でもなく、HELLA製です。
余談ですが、現在は産業用エンジン冷却機器製造のBEHR(ベーア)と、センサー、エレクトロニクスのHELLA(ヘラ)が合弁して、BEHR-HELLAと言う社名に変わっています。日本法人もありますよ。
いずれにしてもドイツの企業で、主に輸送機器のエアコンの設計・製造をしている会社なので、ポルシェが依頼をしたのでしょう。
リバースエンジニアリングして解析し、回路図を描いてみると、なぜ993が発売されると964用は製造中止にしてしまったのか、その理由が分かってきました。

まずは964のCCUのブロック図です。

964のK基板のアナログ回路ブロック図

詳細な回路図はお見せしませんが、モーター用リレーとフラップを駆動するブロック図を描いてみました。

次は993のCCUのブロック図

993のK基板のアナログ回路ブロック図

一見すると大した違いは無いように見えますが、964は制御の心臓であるCPUがモーター駆動用回路を直接コントロールしています。
一方993はCPUはモーター駆動回路を直接コントロールせず、1段中継回路を入れています。
モーター用リレー駆動回路やフラップ駆動回路は外部に比較的大きな電流が流れるモーターが接続されているため、外部からの環境に弱く、壊れやすくなっています。
例えば、雷が車体に落ちたり、バッテリーに大きな衝撃のかかる事故、バッテリーが上がってしまった時のバッテリージャンプさえECUは危険にさらされますが、964の場合、そのHVACのリレーなど外部のモーター駆動部が破壊されたときに、CCUの最も重要なCPUが直接接続されているため、一緒に破壊されかねない危険性を持っています。

  • 世界中で964のCCUが壊れ、交換されているのを知ったポルシェが、HELLA社に故障解析を依頼し、その原因を掴んだHELLA社が、次期モデルである993ではその改良版のCCUを導入した
  • 964のモーター駆動用回路で使用されているICは専用ICをHELLA社が半導体メーカー(具体的にはアメリカのHarris社)に作ってもらったもの。そのICが完全生産中止で代替品も無いため、回路変更をせざるを得なくなった。

この理由のどちらか、または両方が、964用CCUを生産中止し、993用CCUで交換部品も賄うようにした理由でしょう。
Harrisは元々アメリカの軍事・航空宇宙用ICを作っていたメーカーです。立場は圧倒的に自動車メーカーより強いので、後者が理由かもしれませんね。

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Published in911ポルシェ解析修理